僕はこの修学旅行という機会を通して、久しぶりに動物園を訪れた。行くのは実に小学校低学年以来のことで、童心に帰ったかのような胸の高鳴りを感じた。 ここ旭山動物園はかつて廃園の危機に直面し、再興を図って日本で初めて「行動展示」を導入した動物園だそうだ。「行動展示」とは、動物たちの本来のあり方を追求した展示方法のことだ。広大な北海道の地形を利用し、広い園内には動物たちがのびのびと暮らしていた。中でも目を引いた動物は、ヒグマの「とんこ」だ。彼女は親と人里に出没し、母親は猟師によってやむなく殺され、ひとり生け捕られたそうだ。近頃、クマが山をおりて農村地域に出没するというニュースがひっきりなしに流れるようになった。そういった場合には当然地域の人の安全を優先すべきだろう。しかしクマの出没要因が人間にあるのも紛れもない事実だ。そのため人からの視点のみでクマが悪いという杓子定規な考え方はできないのかもしれない。豊かな自然と隣り合う北海道だからこその説明書きに、人間と自然との共存の難しさを感じざるを得なかった。 心身ともに成長して改めて動物園を訪れると、幼いころすべてが好奇心と感動の対象であった園内の景色は、また一味違って見えた。動物園の動物たちは可哀そうだという人も一定数いる。しかし、はしゃいで園内を駆け回る小さな子供たちを見ていると、やはりこの施設は必要不可欠なのだと僕は思う。旭山動物園は「伝えるのは、命。」の理念に基づいている。初めて生で見る自分とは大きく異なる見た目の動物たち。井の中にいた僕たち蛙が大海を知った場所なのである。また、そこで得たかけがえのない思い出は数多の経験を経て、地球上全ての生命の尊さを考える糧となっている。人はそうやって大人に近づいていくのではないだろうか。動物園は僕たちの命に対する考えを深め、その成熟度合いを反映する鏡のように感じられた。(高2 Y・I)

