暁星中学校の生徒として初の校外宿泊行事。入学3年目にしてやっと大規模行事が行えるとあって、僕の心は出発前から弾んでいました。
初日。東京から一気に広島まで移動し、広島の象徴的存在、平和記念公園へ。そこで平和記念資料館を見学しました。そこには、亡くなった方の衣服や倒壊した建物の残骸、まさにそこで人が被爆したであろう石段など、原爆により引き起こされた悲惨な状況がそのまま保存されており、残酷な被害を目の当たりにしました。爆発の瞬間が収められた映像もあり、キノコ雲の下で何が起こっているか想像すると心が締め付けられます。現実は想像できないほど悲惨なものであったでしょう。資料や写真を見れば"地獄"であったのは一目瞭然です。特に衝撃的だったのは、頭蓋骨などが積もった、遺骨の山の写真。思わず「ウッ」と言ってしまいそうなほど、残酷なものでした。その写真1枚だけでも、まともな治療を受けられず、苦しみの中息絶えていった大勢の人の姿、それをまともに弔うこともできない家族の光景が頭に浮かびます。
その後、カトリック幟町教会へ。平和祈願のミサを捧げました。一般的に世界平和記念聖堂の名で知られるこの幟町教会は、身をもって戦争が罪悪であることを体感したフーゴー・ラッサール神父が建造を呼びかけ、当時の教皇ビオ12世の祝福のもと、多くの人々の協力によって1954 年に献堂されました。まさに、人類が民族や宗教などの壁を越え、平和を願う気持ちによって建てられた教会です。(中3 H・T)
2日目、語り部の朴さんのお話を伺いました。当時中学生だった朴さんは、8月6日たまたま学校を休み、路面電車に乗ったところで被爆したといいいます。午前7時9分に発令された空襲警報も午前7時31分には解除されており、一瞬何が起こったか理解ができなかったそうです。8月6日は、建物疎開と呼ばれる建物を取り壊す作業が広い地域で行われており、そこで働いていた学生たちが数多く被爆しました。授業で視聴した別の語り部さんのビデオとは異なり、本人の声を直接聞くのは心に強く響くような感じがしました。その後平和公園内の碑を巡りました。韓国人原爆犠牲者慰霊碑には韓国・朝鮮人が2万人ほど被曝したとあります。原爆は決して日本人だけが被害を受けたわけではないことを強く実感します。「核兵器が地球上から姿を消す日まで燃やし続けよう」という願いが込められた「平和の灯」が早く消えることを願うばかりです。
午後は班別の広島自由研修。僕らの班は、フェリーで宮島へ向かいます。宮島到着後すぐ、道に当たり前のように鹿がいることに驚きました。道中パンフレットを鹿に食べられそうになっている人も発見。お土産としてもみじ饅頭を買い、表参道商店街を散策。焼き牡蠣や穴子飯、広島レモン入りのコーラなど、広島らしいものを食べてまわりました。厳島神社を参拝し、大鳥居を見ます。幸いにも干潮に近かったこともあり、近くまで進んでいくことができました。
3日目、広島から京都へ移動。その後、コース別研修へ。僕は考古学体験コースを選択しました。博物館の職員さんに縄文時代からの土器・古墳などの流れを事細かに説明していただき、実物にも触れることができました。石包丁は川にありそうなサラサラした石という印象です。実際、用途としては稲穂を切るというよりは折って千切るというイメージに近いようで、切れ味は必要としていなかったのでしょう。大昔は一つ一つの用途に合わせて数多くの土器が存在していたということです。続いて、土器修復体験をさせていただいた。同じ古墳から発掘された無数の欠片から、パズルのように組み合うものを探してくっつけるというものでした。これがものすごく難しく、多少の違いはあれど色も形も似ているものばかりで、40数人でくっつけられたのは、わずか2組のみ。プロの方は1日1つの土器が完成できる、と言っていたがやはり職人技だなと感じました。最後に古墳群を見せていただく。側から見ればボコボコとしている地面ですがその凹凸一つ一つが古墳となっていて、遺体や土器などが入っており、階級なども把握できるそうです。(中3 H・T)
4日目、この日は京都・奈良の1日班別自由研修。最初に伏見稲荷神社へ。千本鳥居をくぐり続け、無事山頂まで到達しました。どこもかしこも大小問わず鳥居がありました。ちなみに稲荷山全体には鳥居が1万基あるが千本鳥居にはその名の通り鳥居の数は1,000もなく、実際は800基ほどらしいです。続いて三十三間堂へ。1,032体の仏像と中心に聳え立つ千手観音のオーラに圧倒されました。堂の外壁につたって歩いて行くと、矢が一本天井に突き刺さっています。これは「通し矢」という競技で誤って突き刺さってしまったものでした。路面電車を使用し、北野天満宮へ。菅原道真公を祀っている北野天満宮では撫でた箇所が良くなると言い伝えられている撫で牛の頭を撫でさせていただきました。これで期末試験は安心です。最後に嵐山で抹茶アイスやわらび餅を堪能し、京都の街並みや文化を満喫して、この日は終了しました。
京都では、風景を壊さないために、建物の高さや色が制限されるという話を聞きます。確かに、コンビニの外観も黒などシンプルな色に統一され目立っていることはなかったです。東京や広島では見ることのできない、新鮮な景色です。
最終日、朝からどんよりとした空。雨の降る中、建仁寺・禅居庵で座禅体験。まずは座禅の正しい組み方を教えてもらいました。片足のくるぶしを逆足の腿にのせ、下になった足のくるぶしを上の足の腿にのせる。背筋を伸ばし、顔は前を向いたまま目線は1mほど前の畳を見るように。深く深呼吸し、右手を上に両手を組み、卵を作るようにします。ほとんどの人が足を組むことが出来ず、正座やあぐらで行っていました。座禅の際にはお坊さんに叩かれるイメージがありますが、お坊さんの独断で叩くだけでなく、自分からお坊さんにお願いし叩いてもらうことも可能です。座禅をすることで普段慣れない姿勢や環境に身を置き、静寂の中、ただただゆっくりと心を落ち着かせることができます。学校での祈りや黙想といった方法とは全く別だが、静かな環境で心を落ち着かせ、自分と向き合う時間を作るというのは両者ともに通ずるものだと思います。そういった意味で、人に必要なのは、心を落ち着かせ己について考えることなのだ、と考えさせられました。
長いような短いような、あっという間の4泊5日、僕にとっての初めて尽くし旅行は自分の糧になると確かに思えます。ただ「楽しい」だけの研修旅行という考えは初日からひっくり返されました。ガラス一枚越しに体感した死の痕跡、語り部さんの生の声、東京にいては見ることのない街並み、普段関わることのない宗教。平和とは何か考えたかと思えば、自分とは何かを考えます。そんな機会は滅多に得られるものではありません。楽しかった思い出と共に、自分の中に残り続けるでしょう。最高のメンバーと、最高の旅ができたことを僕は本当に誇りに思います。(中3 H・T)



